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食べることをもっと好きになろう

子どもの豊かな食生活のために、食事について学ぶコラム。できるだけ体に良いものを食べさせようとしても、親の思い通りには食べてくれないのが子どもです。もっと食事を楽しんでもらうために、まずは子どもが健やかに育つ食事について知りましょう。

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子どもが健やかに育つ食事とは?

子どもにとって良い食事とは何でしょうか? なるべく農薬の使われていない野菜を使った料理? さまざまな食材をバランスよく使った栄養満点の料理?どちらも正解ですが、一番大切なのはおかずの内容よりもまず、毎日規則正しい時間にごはんを食べることと考えられています。決まった時間に起きて、ごはんを食べる。この習慣をつけるだけでも、子どもが健康に育つための生活リズムが身についていきます。

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子どもの健やかな成長には、早寝早起きは欠かせません。時間に余裕を持って起きると、自然とお腹がすいて無理なく朝食が食べられます。

特に朝食は、子どもの成長にとって欠かすことのできない食事。私たち人間の体は寝ている間もエネルギーを使っており、朝起きた時には脳も体もエネルギーは空っぽな状態です。特に脳を働かせるためのエネルギーは、ごはんやパンなどの炭水化物に含まれるブドウ糖でしか補給されないので、これらを食べないと頭が働かず、遊びや勉強に集中できないのです。文部科学省が行った「平成27年度全国学力・学習状況調査」によると、朝食を食べている子ほど成績が良く、ほとんど食べていない子に比べると学力調査の平均正答率が約2割も高い傾向にあることが分かっています。

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エネルギー源となるごはんやパンの他に、タンパク質やビタミンなどの栄養素を豊富に含むおかずを合わせるのが理想です。

そこで知りたいのは、どんな朝食を子どもに食べさせればより良いのかということ。『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』(小山浩子著)によると、まずは脳のエネルギーとなるブドウ糖を含む、ごはんやパン(もし余裕があれば血糖値の急激な上昇を防いでくれる胚芽米や、雑穀パンにするとより良い)を食べさせること、さらに、脳細胞の働きを高めるのに不可欠な栄養素の産出量を増やしてくれる「DHA」を豊富に含む青背の魚、良質なタンパク質を多く含む、卵、鶏肉、牛乳などを使った食事が理想的とされています。牛乳に含まれるカルシウムは、骨や歯が成長するこの時期にとても重要な栄養素。神経や脳の活動をスムーズにする働きもあります。まずは、朝食を食べる習慣を身につけさせることから始めてみましょう。

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青背の魚:脳をスムーズに動かすためのDHA が豊富。離乳食で取り入れる場合は1歳過ぎてからが目安。
卵:タンパク質が豊富。さまざまな調理法に対応し火が通るのも早いので朝の忙しい時に重宝します。
ほうれん草:成長期に不足しがちな鉄分を多く含みます。おひたしなどで食べるのがおすすめ。

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鶏むね肉:もも肉に比べて脂質が少ない上、体に吸収されやすい上質なタンパク質が豊富。
牛乳:子どもの骨や歯ができるにあたり大切になるカルシウムの宝庫。

子どもと一緒に料理をしてみよう

食事に消極的な子どもは、料理に参加させてみましょう。

朝起きてきた子どもに、いきなり朝食を出して「はい、これ体に良いから食べて!」と言っても、なかなか素直に食べてくれないのが難しいところ。夜早く寝かせる、朝早めに起こして時間に余裕を持たせる、など親ができることをしても、朝起きたばかりには食欲がわかない子が多くいます。

食欲がわかない時に、成長のためにと無理矢理食べさせようとするのは逆効果。機嫌が悪くなってしまうこともあります。食べることにあまり興味がない、食べることが好きではない子どもには、料理を作る行為に参加してもらい、食に慣れ親しんでもらうのが効果的です。

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ちぎる:まずはキャベツなどの葉野菜をちぎって、食材の感触を知ることから。

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振る:袋に調味料、野菜を入れて振るだけで簡単サラダの完成。

料理を作る行為というと難しいイメージがありますが、つまりは「お手伝い」。買い物を一緒にする、キャベツなどの葉野菜を手でちぎる、袋に切った野菜と調味料を入れてしゃかしゃかと振る、小さな子でもできるこれらのことも立派なお手伝いです。少し大きくなってきたら、にんじんやじゃがいもなどの扱いやすいものを切ったり、おにぎりをにぎってみたり、盛りつけ、食卓の準備などもできるようになります。

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切る:食材を切ることができるようになるとぐっと食への関心が深まります。

子どもは楽しい記憶と密接に結びついている食べものを、好きになる傾向があるとされています。普段は食べたがらないにんじんやピーマンも、一緒に切ったり、炒めたりしたら、喜んで食べることも。また、接する機会が多くなればなるほど、その食べものに対する抵抗感は自然と減っていくとされています。食べムラがある、何を作っても食べてくれない、好き嫌いが激しい、そんな子にはお手伝いを通してまず食に関心を持ってもらいましょう。

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鍋に入れる:鍋に入れた食材が、どのように変化するかを観察させるのも楽しい。

料理は、五感をフルに活用して行う作業。ちぎったキャベツの触感、目玉焼きを焼いている時の香りや音、これらが子どもたちの感性を刺激してくれることでしょう。皿に料理を盛りつけることで、色彩のセンスも培われます。

お手伝いを通して自己肯定感を高める

子どもに食べることを好きになってもらうのに効果的な調理などのお手伝いは、他にもたくさんの良い効果があることが分かっています。国立青少年教育振興機構『「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告書』によると、調理や配膳などのお手伝いをしている子ほど道徳観や正義感が高い傾向があり、さらには東京都教育委員会が独自に行った「児童・生徒の学力向上を測るための調査」によると、「家の手伝いや地域の役に立つことをしていますか」という問いに対して、「続けてしている」「ときどきしている」と回答した児童の平均正答率は「1、2度したことはある」「まったくしたことがない」と回答した児童の平均正答率よりも高くなっているという傾向があることが分かりました。

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焼く:火の怖さを覚えたら目玉焼きや、野菜炒めなど簡単なことから調理させてみて。

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にぎる:普段は口に入れるだけのごはんの感触を知り、五感を使うことができます。

子どもはお手伝いをして、家族に感謝されることにより、感動と達成感を得られます。結果、より自分に自信を持てるようになり、自己肯定感が高まります。また、このお手伝いはどのように工夫したらもっと上手にできるのか、と考えることにより、段取りを考えるクセが自然とつくようになるのです。「よく手伝う子」は「あまり手伝わない子」に比べ、自己評価が高いという調査結果(※「子供のお手伝い」調査より(東京成徳大学深谷昌志教授と花王株式会社生活者研究センターの共同調査)が出ていることからも分かるように、子どもにとって食事を作る行為(またはその他の家事)に参加することは、良い影響ばかりです。

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買い物をする:このおかずを作るにはどんな食材が必要か相談しながら買い物を。

まずは簡単なことから始め、子どもが慣れてきたら包丁や火を使わせるなどステップアップさせていくと、より達成感を感じられるでしょう。「子どもを参加させると余計に時間がかかる」という方は、自分に余裕がある休日の朝などに、一度試してみるのがおすすめです。「せっかく作ったのに食べてくれない」というイライラから解放され、子どもがみるみる成長していくことに気づくはずです。

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盛りつける:家族の分の盛りつけまですると、数や量の勉強が同時にできます。

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準備をする:料理に合わせたお皿やカトラリーを用意することで想像力を育めます。

野菜と仲良くなろう

子どもが嫌いな食べものナンバーワンである野菜は、親が最も食べてもらいたい食材でもあります。

子どもに食べることを好きになってもらうには、先ほどご紹介した料理を作る行為に参加してもらうこと(お手伝い)の他に、食べものに関する知識を増やすことも効果的だとされています。

文部科学省の「幼稚園教育要領」にも「自ら進んで食べようとする気持ちを育てる上で、食べものに対する興味や関心を高めることが重要」であるとして、野菜栽培や田植えを媒体とした食育活動が示されています。つまり、子どもは、種まき、苗植え、収穫などの一連の活動を経験させて、食べものがどのように栽培されているのかを知ることで、食べものに興味を持っていくということです。実際、野菜の栽培を体験した子どもは、体験前に比べて給食をよく食べるようになり、野菜嫌いの割合が低下した報告もあります。

日常的に農産物に触れる機会が少ない現代の子どもたちのために、学校や自治体はもちろん、JA グループなど、数多くの団体が農業体験に取り組んでいます。新学習指導要領(平成20年3月改定)に「食育の推進」が位置づけられたことで、今後さらに農業体験活動の取り組みは活発になるでしょう。これらは食育から一歩進んだ、「食農教育」とも呼ばれ、約6割の子どもが野菜の好き嫌いがある(※「子どもの野菜の好き嫌いに関する調査報告書」(カゴメ株式会社)より)とされている今、好き嫌いを軽減する方法として注目を浴びています。

食べものを観察させて興味を持ってもらう

しかし、近くに畑などの環境がない場合、日頃から食農教育を行うのはハードルが高く、親の負担にもなりかねません。そこで提案したいのが、野菜などの食べものをよく観察させるという方法です。

例えば、買ってきたトマトを子どもに渡してみます。トマトはどんな色をしているか、どんな触り心地か、押すとどんな感触がするか、切ったときの断面はどんな見た目かなどいろいろと質問してみましょう。毎日のように目にしている野菜も、じっくりと観察してみると新たな発見がたくさんあるので、徐々に子どもも夢中になってきます。

観察が終わったらそれらの野菜を絵に描いたり、折り紙で折ってみたり、工作したりしてより理解を深めましょう。描く、折る、切るなどの体験が、野菜への抵抗感を小さくするきっかけになります。

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家にあるもので手軽に工作できる「マグネットベジタブル」
トイレットペーパーの芯やおもちゃが入っている丸い容器などに磁石をつけて、実際の野菜の形に近づくように形を整えます。実際の野菜を見ながら断面の絵を描いたり、ネットで葉っぱなどをつけたりして、工夫をしながら作ってみましょう。 野菜がどんな形をしているか、断面はどんな模様をしているかなど、その野菜が持つおもしろさを発見できます。おままごとの道具としても遊べます。

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家にあるもので手軽に工作できる「等身大ベジタブル」
段ボールを子どもの身長と同じになるように野菜の形に切り抜き、折り紙などで色をつけていきます。あっという間に自分と同じ大きさの野菜ができあがります。

「苦手な野菜と友達になろう」「この野菜よりも大きくなろう!」と声掛けしてあげると、苦手だったはずの野菜にどんどん親しみを覚えてくるでしょう。作った野菜は子ども部屋のインテリアに活用できます。

子どもの体と心のために必要な食事も、無理やり食べさせていては子どもも親も疲れてしまいます。子どもに食べることを好きになってもらうことが大切です。お手伝いや、農業体験、工作などを通して、食べものに興味を持ってもらうことから始めてみませんか。

工作:しげおかのぶこ(トイ・デザ イナー)
子ども向けワークショップ「こどもじっけんしつ」を通して、楽しいものづくり、遊びを提案する「STUDIO pippi」。おもちゃブランド「gg*」のデザイナーとしても活躍。

Text: Marie Takada
Illustration: Asami Hattori

参考文献:
文部科学省「平成27年度 全国学力・学習状況調査」佐藤剛史『地頭のいい子を育てる食卓の力』(現代書林)/小山浩子『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』(日本実業出版社)/川島隆太『ホットケーキで「脳力」が上がる』(小学館)/文部科学省『新学習指導要綱』/文部科学省『幼稚園教育要領』/国立青少年教育振興機構『「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告書』/東京都教育委員会「児童・生徒の学力向上を測るための調査」

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