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夏休みの自由研究のヒントに!「おうちチャンネル」がすすめるアイディア

いよいよ夏本番。いつもであれば海水浴に山でキャンプ、夏のレジャー真っ盛りといったところですが、今年はそうも言ってられない様子。今年はどんな夏を過ごそうか考えあぐねているママ・パパも多いかとお察しします。

そんな中、今年もやってくるのが「夏休みの自由研究」。何十年経っても変わらぬこの文化は、日本の隠れた風物詩と言えるかも。夏休み最終日間近に、焦って取り組む子も多いことでしょう。とはいえ、普段の学校の宿題とは違って、文字通り“自由”な研究ができるチャンスと捉えることもできるはず。子どもたちの隠れたセンスや才能が芽吹く契機となるかもしれません。

そこで今回は、今年4月から始動したおうちで子どもと過ごす保護者に向けたWEBプラットフォーム「こどもと学ぶ、おうちチャンネル」から、この夏おすすめの自由研究をいくつかご紹介。立ち上げメンバーの川辺洋平さんと中原寛法さんにお話を伺いました。

おうちで過ごす時間が長いからこそ、
新たな学びをつくりたい

「おうちチャンネル」は、コロナによる外出自粛を受けて急きょ立ち上がった新サービス。子どもと哲学的な対話を楽しむ「こども哲学」を推進し、保育士や教員免許も持つ川辺洋平さんと、一児の父でもあり、かねてから川辺さんとSTEAM教育について意見交換をしていたクリエイティブ・ディレクターの中原寛法さん、またそれぞれ子どもがいたり、教育関係で活動しているメンバー8人が集結。およそ3ヶ月のうちに怒涛の勢いでさまざまなプログラムが誕生したそうです。

「休校が続いて、先生や友達に会えない」
「外で遊んだり、勉強したりもできない」

そんな「できない」という声が広がる中で、何らかの形で「できる」を模索したいと考えたことから、プロジェクトが始動したと語る川辺さん。子どもとおうちにいる時間が長いからこそ、WEBを介した新たな学びが提案できるのではないかと考えたようです。

その手始めに、オンライン学習コンテンツを徹底的にリサーチし、年齢ごとに整理した「無料学習リンク集」を公開。とはいえ保護者も急なテレワークが始まっててんやわんやの頃、情報を集めるだけでは「どう使っていいかわからない」という声も聞こえるようになりました。そこから「おうちチャンネル」独自のプログラム提案がスタート。

すぐに始められる自由研究 その1:
モノづくり体験

まずは材料やキットを買うだけで始められるものからと、発表と同時に大人気だったプログラムが「かまぼこづくりキット」。神奈川・小田原の老舗かまぼこ屋「鈴廣」さんが、普段行っていた「かまぼこづくり体験」が当面中止になったことをきっかけに(6月からは段階的に予約を再開)、おうちでできるかまぼこづくりキットが販売されています。

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かまぼこ2個分のすり身セットが届いたら、すり身を練って成形し、お湯で蒸したあとに氷水につければ、あっという間にかまぼこが完成。余ったもう1個のすり身は、新たに素材を加えて色をつけるなどの実験にチャレンジできます。おいしく頂いた後は、かまぼこがどんな魚からできてるのかを調べたり、他のすり身を調べてみたり、新たな研究が始まるかもしれません。

詳しくはこちら ≫

そのほか、ソーセージづくりが体験できる「伊豆沼農産のおうちでつくれるウイナーキット」や、にょきにょき生えるしいたけ栽培を楽しむ「しいたけ栽培キット」なども記事の中で丁寧に紹介されています。

すぐに始められる自由研究 その2:
研究の方法は、その道のプロに聞く。

さらに「おうちチャンネル」では、子どもたちがSTEAMな学びにふれる提案として、独自のプログラムを発信。講師には大学・大学院で何らかの「研究」に携わった人々を招き、普段の学校や塾の授業では出会えない機会を創出しています。

中でも「サイエンス事件簿〜みんなの家にも事件アリ!?」シリーズは、生命倫理を研究していた現役保育士という逸材、タクトくんを講師に招き、日常にあるサイエンスの不思議に迫るもの。

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ルーペを持って家の周りにある「不思議」を探求していくこの企画。この日はアリの生態をみんなで観察したようです。ルーペからのぞくと、アリの周辺に「黒いモノ」を発見。それぞれ子どもたちが答えを探して推理します。この推理のプロセスは、すでに研究の一歩になっているようです。

「学校に行っても、“研究のしかた”って実は学べないんですよね」と語る中原さん。なるほど、自由研究を学ぶコツは、その道のプロである研究者との出会いが重要なのかもしれません。

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子どもと過ごす時間が長い今こそ、おうちで楽しめるSTEAMな学びを紹介している「おうちチャンネル」ですが、上述したタクトくんのように、様々な研究に携わった人が参加しはじめているようです。

研究者×子どものマッチング

「タクトくんはもともと生命倫理を研究していて、今は東京を離れて保育士として働いています。彼のように、大学にいる研究者だけでなく、大学院で修士や博士を取得した“ポスドク”と呼ばれる人たちは全国にたくさんいます。『おうちチャンネル』では今後、そんな日本全国に散らばる独自の研究視点を持つ人にも参加してもらいたいと思っています」

そう語る「おうちチャンネル」の川辺さんもまた、早稲田大学大学院で教育学の博士課程に在籍中の方。コアな専門研究を活かす方法は、もっと多様にあるはずだと語ります。

「ぼくたちは世の中にある面白い研究を、子どもの教育につなげたいと考えています。もし何かに興味を持った子どもが、その世界のコアな研究者と出会ったら、ぐっと世界が広がることでしょう。それに、プログラムを通して学校では知り合えなかった共通の興味を持つ子ども同士のコミュニティが作れるかもしれません」

そう語る中原さんは、WEBサービスだからこその可能性を感じているそうです。ここから、新たな研究者と子どものマッチングが始まるかもしれません。

すぐに始められる自由研究 その3:
3原色がもつ無限の可能性。おしゃべり図工室

そんな研究者と子どもの出会いはサイエンスにとどまりません。人気プログラム「おしゃべり図工室」では、様々なアーティストや美術研究者などを招いたアート教室。

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(c)Andre Walther/Cultura/Image Source RF/amanaimages

「3原色の不思議」をテーマとした回では、「3原色のプロ」と呼ばれる東京藝術大学大学院出身のアートナビゲーター・まゆちゃんを講師に、赤、青、黄の水彩絵の具を使って、どんな色が生み出せるかを実験します。よくある絵の具セットには12色の絵の具が付いてきますが、3つの色だけでも多様な色がつくりだせることを、子どもたちとともに発見していくようです。

ほかにも「おしゃべり図工室」では、魔法のような水彩画を描くアーティストとともに水彩画の極意に迫る「かんがえる絵画 魔法の水彩画」や、美術館や図工教室でよく見かける石膏像をテーマとした「かんがえる彫刻 石膏像の秘密」なども開催。

図工の時間が、より深く楽しめそうなプログラムばかりです。

子どもが自発的に楽しむ「研究」とは?

さて、いくつか自由研究のアイデアになりそうなプログラムを紹介してきましたが、我が子がどんなことに興味を持つかは千差万別。子どもたちが自発的に研究を楽しむ秘訣について、「おうちチャンネル」のお二人にお聞きしました。

「まずは大人がゴールを設計してしまうのではなく、失敗がゆるされる環境であること。研究は失敗の連続ですし、失敗だと思ったことから世紀の大発見が生まれていることも多々。目標を達成できずとも、そこから何を学んでいくかが”自由”な研究の醍醐味だと思います」(中原さん)
「子どもは誰しもすでに研究している”変なこと”がきっとあるはず。マンガを全巻読破するのも、虫をずっと見つめるのも研究の始まりです。でも、小学校で学年が上がるにつれて、自分が変なのではないかと気にし始める子も多いようです。夏休みという友達に会えない時期は、かえってひと目を気にしたり、恥ずかしがったりせず、独自の”変なこと”を突き詰められるチャンスだと思います」(川辺さん)

いよいよ夏休み、ぜひ子どもが独自に持つ”変なこと”に気付き、一緒に研究を楽しんでみてくださいね。


塚田有那(ARINA TSUKADA)
編集者、キュレーター。世界のアートサイエンスを伝えるメディア「Bound Baw」編集長。一般社団法人Whole Universe代表理事。2010年、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE」を若手研究者と共に始動。16年より、JST/RISTEX「人と情報のエコシステム」のメディア戦略を担当。近著に『ART SCIENCE is. アートサイエンスが導く世界の変容』(ビー・エヌ・エヌ新社)、共著に『情報環世界 - 身体とAIの間であそぶガイドブック』(NTT出版)がある。大阪芸術大学アートサイエンス学科非常勤講師。
http://boundbaw.com/

Text : Arina Tsukada
Illustration : Lee Izumida




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